解説

数学の基礎概念――簡潔な用語集

集合、代数的構造、写像、濃度に関する19の基礎概念を、例とともにテーマ別にまとめた簡潔な参考資料です。

目次

インタラクティブ

関数、単射、全射、全単射

A から B への関数

性質を選んで、矢印が A と B をどう覆うか見てください。

f: A → B

関数は A の各元を B のちょうど1つの元へ対応させます。単射は同じ行き先を再利用せず、全射はすべての行き先を覆い、全単射は両方を満たします。

数学のさまざまな分野で繰り返し使われる19の概念を、テーマ別にまとめた用語集です。教科書全体や解析学の定理集ではありません。定義同士のつながりが見えるよう例を添えていますが、より広い背景は各分野の学習で扱います。

集合と集合演算

1. 集合

集合とは、互いに区別できる対象の集まりで、各対象を元という。x∈Xx\in XはxxがXXの元であることを表す。たとえば2∈{1,2,3}2\in\{1,2,3\}である。

2. 外延的定義と内包的定義

集合は元を列挙する外延的な方法、または元が満たす性質を示す内包的な方法で表せる。たとえば2から8までの偶数は、{2,4,6,8}\{2,4,6,8\}とも{n∈Z:2≤n≤8, nは偶数}\{n\in\mathbb Z:2\le n\le8,\ n\text{は偶数}\}とも書ける。

3. 部分集合

XXのすべての元がYYにも属するとき、XXはYYの部分集合であり、X⊆YX\subseteq Yと書く。

X⊆Y  ⟺  ∀x (x∈X⇒x∈Y).X\subseteq Y\iff\forall x\,(x\in X\Rightarrow x\in Y).

たとえば{1,2}⊆{1,2,3}\{1,2\}\subseteq\{1,2,3\}である。

4–7. 和集合、共通部分、差集合、補集合

和集合は少なくとも一方に属する元を、共通部分は両方に属する元を集める。

X∪Y={x:x∈Xまたはx∈Y},X∩Y={x:x∈Xかつx∈Y}.X\cup Y=\{x:x\in X\text{または}x\in Y\},\qquad X\cap Y=\{x:x\in X\text{かつ}x\in Y\}.

差集合X∖YX\setminus Yは、XXには属するがYYには属さない元からなる。補集合には全体集合UUの指定が必要で、X⊆UX\subseteq Uに対してXc=U∖XX^c=U\setminus Xである。X={1,2}X=\{1,2\}、Y={2,3}Y=\{2,3\}なら、X∖Y={1}X\setminus Y=\{1\}、共通部分は{2}\{2\}となる。

8. 空集合

空集合∅\emptysetは元を持たず、どの集合の部分集合でもある。

9. 冪集合

冪集合P(X)={A:A⊆X}\mathcal P(X)=\{A:A\subseteq X\}はXXのすべての部分集合からなる集合で、2X2^Xとも書く。XXが有限なら∣P(X)∣=2∣X∣|\mathcal P(X)|=2^{|X|}である。たとえばP({a})={∅,{a}}\mathcal P(\{a\})=\{\emptyset,\{a\}\}。

10. 直積

直積は順序対からなる。

A×B={(a,b):a∈A, b∈B}.A\times B=\{(a,b):a\in A,\ b\in B\}.

一般にX1×⋯×XnX_1\times\cdots\times X_nは、第ii成分がXiX_iに属する順序付き組の集合である。すべての因子がXXならXnX^nと書く。順序が重要なので、(a,b)(a,b)と(b,a)(b,a)は異なることがある。

11. 対称差

対称差はA,BA,Bのちょうど一方に属する元からなる。

A△B=(A∖B)∪(B∖A)=(A∪B)∖(A∩B).A\triangle B=(A\setminus B)\cup(B\setminus A)=(A\cup B)\setminus(A\cap B).

上のX,YX,YではX△Y={1,3}X\triangle Y=\{1,3\}である。

代数的構造と数

12. 群と位数

群とは、空でない集合GGと二項演算⋅:G×G→G\cdot:G\times G\to Gの組で、演算の結合法則、単位元の存在、各元の逆元の存在を満たすものをいう。すなわち(xy)z=x(yz)(xy)z=x(yz)であり、ex=xe=xex=xe=xとなる単位元eeがあり、xx−1=x−1x=exx^{-1}=x^{-1}x=eとなる。結合的演算を持つ集合は半群、単位元も持つ半群はモノイドである。演算が可換な群をアーベル群という。有限群の位数は元の個数である。整数全体は加法について、単位元00を持つアーベル群をなす。

13. 代数的数と超越数

複素数が有理数係数の0でない多項式の根なら代数的数、そうでなければ超越数である。たとえば2\sqrt2はx2−2x^2-2の根なので代数的数である。

写像と大きさ

14. 写像

写像f:X→Yf:X\to Yは、XXの各元にYYの元をただ一つ対応させる。X,YX,Yはそれぞれ定義域、終域であり、像はf(X)={f(x):x∈X}⊆Yf(X)=\{f(x):x\in X\}\subseteq Yである。f(x)=x2f(x)=x^2をR\mathbb R上で考えると、像は終域R\mathbb R全体ではなく[0,∞)[0,\infty)である。

15. 単射、全射、全単射

f(x1)=f(x2)f(x_1)=f(x_2)ならx1=x2x_1=x_2となる写像を単射、終域のすべての元が値として現れる写像を全射という。両方を満たすものが全単射である。f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb R、f(x)=x3f(x)=x^3は全単射である。

16. 逆写像

写像f:X→Yf:X\to Yに逆写像f−1:Y→Xf^{-1}:Y\to Xが存在するのは、ffが全単射の場合に限る。f−1(f(x))=xf^{-1}(f(x))=xおよびf(f−1(y))=yf(f^{-1}(y))=yを満たす。たとえばx↦x3x\mapsto x^3の逆写像はy↦y3y\mapsto\sqrt[3]{y}である。

17. 対等な集合

AAからBBへの全単射があるとき、A,BA,Bは対等であるといい、A∼BA\sim Bと書く。有限集合なら元の個数が等しいことを意味する。

18. 濃度と可算性

集合AAの濃度∣A∣|A|はその大きさであり、有限集合では元の個数である。自然数全体N\mathbb Nと全単射を持つ無限集合は可算無限という。「可算」は有限集合も含めて使われることが多い。偶数全体は0,2,−2,4,−4,…0,2,-2,4,-4,\ldotsのように列挙できるため可算無限である。この一覧をN\mathbb Nの始点に合わせて対応させればよい。

19. 濃度の比較

AAからBBへの単射があれば∣A∣≤∣B∣|A|\le|B|であり、濃度が等しいことは両者の間に全単射があることを意味する。通常の濃度の比較で∣A∣<∣B∣|A|<|B|とは、∣A∣≤∣B∣|A|\le|B|かつ∣A∣≠∣B∣|A|\ne|B|という意味である。ここで扱うのは集合の大きさを比べるための語彙であり、無限濃度の算術全体ではない。