解説

ド・モアブルの公式――整数乗の場合

オイラーの公式を用いて正・零・負の整数乗に対するド・モアブルの公式を証明し、3乗の計算例を示します。

目次

インタラクティブ

べき乗は単位円上の角度を何倍にもする

単位円上の z と zⁿ

θ や n を動かして zⁿ を回転させてください。

(cos θ + i sin θ)ⁿ = cos(nθ) + i sin(nθ)

単位円上の z は z = cos θ + i sin θ です。z を n 乗すると絶対値は 1 のまま、偏角は n 倍になります。θ = 30°、n = 3 ならちょうど i に届きます。

極形式で複素数を掛けると、絶対値は掛け合わされ、偏角は加えられる。ド・モアブルの公式はこの規則を整数乗についてまとめたもので、特に単位円上の複素数のべき乗を簡潔に計算できる。

公式と適用範囲

z=r(cos⁡θ+isin⁡θ)z=r(\cos\theta+i\sin\theta)、r≥0r\ge0とし、角度θ\thetaはラジアンで測る。正の整数nnについて

zn=rn(cos⁡(nθ)+isin⁡(nθ))z^n=r^n\bigl(\cos(n\theta)+i\sin(n\theta)\bigr)

が成り立ち、z=0z=0の場合も含む。n=0n=0ではz≠0z\ne0のとき両辺が定義され、値は11である。負の整数nnではz≠0z\ne0が必要であり、その場合は通常の逆数として同じ公式が成り立つ。したがって、べきが定義されるすべての整数nnに対して公式を使える。

オイラーの公式による証明

z≠0z\ne0なら、オイラーの公式によりz=reiθz=re^{i\theta}と書ける。正の整数乗では

zn=(reiθ)n=rneinθ=rn(cos⁡(nθ)+isin⁡(nθ)).\begin{aligned} z^n &= (re^{i\theta})^n=r^n e^{in\theta}\\ &=r^n\bigl(\cos(n\theta)+i\sin(n\theta)\bigr). \end{aligned}

となる。ここでeiϕ=cos⁡ϕ+isin⁡ϕe^{i\phi}=\cos\phi+i\sin\phiを用いた。n=0n=0なら両辺は11である。n<0n<0の場合は正のべきの式の両辺の逆数を取ればよく、これはz≠0z\ne0のときに限り可能である。z=0z=0かつn>0n>0なら両辺とも0である。以上で各場合が示された。

例と使いどころ

絶対値1の複素数z=cos⁡(π/6)+isin⁡(π/6)z=\cos(\pi/6)+i\sin(\pi/6)にn=3n=3を適用すると、

z3=cos⁡(3π/6)+isin⁡(3π/6)=cos⁡(π/2)+isin⁡(π/2)=i.\begin{aligned} z^3 &= \cos(3\pi/6)+i\sin(3\pi/6)\\ &=\cos(\pi/2)+i\sin(\pi/2)=i. \end{aligned}

となる。この計算では絶対値1は変わらず、偏角が3倍になる。一般に、極形式なら整数乗を絶対値のべきと偏角の積に置き換えられるため、直交座標で何度も掛けるより扱いやすい場合がある。